玲汰、知ってる?

風になびく莉緒の髪の毛からシャンプーのいい匂いがして、性格は男なのに身だしなみはしっかり女の子だから腹が立つ。

「♪♪」と上機嫌に鼻唄なんて歌ってやがるし。まあ、声質も歌声も一般レベルより上だから文句も言えやしない。


学校が見えてくると正門で登校指導をやっていて俺は自転車から降りた。いや、降りたというより解放された。

〝あいつ女に自転車を漕がせてるぜ〟と無言の視線が痛かったから。俺の勝手な被害妄想かもしれないけどさ。


「立花さんおはよー!」

「莉緒ちゃんおは!」

「立花、昨日の授業でさー」

莉緒が自転車置き場に向かってる途中で、すれ違う人がみんな話しかけていた。

それは男女問わず学年不問であいつは本当に友達が多い。


「うん。おはよ」

莉緒はニコリと笑って挨拶を返した。


傲慢で口が悪いくせに笑顔だけはキラキラしている。あいつは猫を被る性格じゃないし、人によってキャラを変えるほど計算高くもない。

だから言いたいことは言うし、わりとキツい発言もしたりするのに莉緒は昔から人に嫌われない。

こんなに色々と自分のキャラを模索している俺があまりにバカみたいだ。
< 12 / 161 >

この作品をシェア

pagetop