玲汰、知ってる?
「ちゃんと杉野くんに謝れよ」
昇降口で靴を履き替えて教室に向かう廊下。
俺のクラスは1年1組。莉緒のクラスは1年3組。
まるで母親のように俺の背中を押したあと、莉緒は自分のクラスへと入っていった。
3日振りの教室の匂い。こんなにソワソワとした気分は入学式以来かもしれない。
教室を見渡すとまだ杉野は来ていなかった。運よく席替えで窓際の一番後ろの席になった俺は静かに杉野が登校してくるのを待った。
3日振りだというのにクラスメイトたちは特に俺に対して反応はない。
別に寂しいってわけじゃないけど、きっとあいつなら……莉緒なら席の周りに人が集まったりするんだろうな。
自分でいうのもヘンだけど性格は悪くないと思うし、見た目だってそんなにおかしくはない。
イケメンとは言わなくても近所のおばちゃんからは『玲ちゃんは男前だね』って評判は良いほうだし、街を歩けば二度見されることもある。
だから人気者になっていても不思議じゃないはずなんだ。
莉緒いわく『お前は自信がなさすぎなんだよ』って叱られる。確かに自信がないから前に出られないし、目立つこともできない。
本当、男のくせに情けない。