玲汰、知ってる?

そのあとはまた莉緒の乗りたい乗り物に向かって、絶叫系ではないけれど今度はリバーアドベンチャー。

4人乗りの丸いマシンで激流を下っていくアトラクション。川の流れによってグルグルと回るし僅かな振動でも水しぶきが上がって服はびしょ濡れ。


「どうすんだよ、これ」

莉緒はタイミングよく俺の背中に隠れてたから全然平気そうだけど、俺は前髪に水滴が溜まるほどの濡れ具合。

「ウケる」

「ウケねーよ」

他人事のように笑う莉緒を見て俺はため息をついた。その先にはなにやら空気がどんよりとしている空間があって、建物には【恐怖の館】と書かれている。

俺はニヤリと笑って、仕返しのように莉緒を誘った。


「あそこに行こうぜ」

莉緒は怖いもの知らずで虫さえも素手で触る女だけど、唯一苦手なものがあるとしたらこういうオカルト系。

おばけや幽霊の類(たぐ)いのものは本当にダメで、夏になると決まってやっている心霊番組もすぐにチャンネルを変える。

だけど性格的に素直に言えないのか『幽霊なんているわけないだろ』とか意地を張る。

本人はバレてないと思ってるけど、その弱点くらい16年も一緒にいればお見通しだ。
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