玲汰、知ってる?

「お前さ、怖いんだろ。素直になれよ」

「は、はあ?」

「じゃあ、なんで俺の服を掴んでんの?」

気づけばぎゅっと莉緒がTシャツの端を握っているのは知っていた。むしろ莉緒が怖がるたびに引っ張るから首が締まって普通に苦しい。


「う、うるせーな!前が見えないからだよ!」

「わっ!!」

「……ひぃ」

少し脅かしただけなのに莉緒は肩を小さくした。
しかも今まで聞いたことのない声まで出して。

今日はなんなんだよ。

ちょっとというか、だいぶ女の子らしいんだけど。


「てめえ、殴るぞ」

この言葉使いさえ直ればなあ……。

お化け屋敷を出ると空の色が変わっていた。

家族連れの人たちは次々と出口のゲートへと歩いていて、時間の感覚がなかったけどもうそんな時間か。


お化け屋敷を出てから莉緒は何故かずっと無言。

少しからかいすぎた?

様子を伺いながら歩いていると莉緒がピタリと足を止めて、あるものを指さした。それは……。


「最後に観覧車乗ろうよ」

大きくて見上げなければ最上部が見えないほどの観覧車。ジェットコースターの次に人気の乗り物で、昼間はかなりの列ができていたけど今は帰り時だからか空(す)いていた。
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