玲汰、知ってる?
「ふざけてるとまたお化け屋敷に行くからな」
顔が赤いのは夕日のせいなのか、なんなのか。
俺はふいっと再び景色に視線を戻して、それを莉緒がじっと見つめてるのが分かる。
「本当はさ、今日が終わらなきゃいいのにって思ってた」
莉緒がぽつりとそう呟いた。
「時間を忘れるぐらい本当に今日は楽しかったよ」
ふとした瞬間に見せる儚げな表情。
ふざけたり、からかったり、真面目になったり。
なんなんだよ。
お前、なに考えてんだよ。
「なんでそんな最後みたいな言い方するんだよ」
この胸にあるモヤモヤは勘違いなんかじゃない。
ずっとずっと、なにかがおかしかった。
日常の中のほんの些細なことでも、なにか感じたことのない違和感があって。
こうして観覧車に乗って夕日を見るその瞳にすら、俺には見えないなにか違うものが映ってるんじゃないかって、そう思ってた。
わずかな沈黙。
なんの音もしない、ふたりだけの世界。
「玲汰……私、病気になった」
ドクンと、心臓が大きく跳ねた。