玲汰、知ってる?

「池内くん。これ休んでた時のプリント」

雲行きが怪しい空をぼんやりと窓から眺めていると、学級委員の女子に声をかけられた。

眼鏡でふたつ結びをしていて、名前は確か鮎川……鮎原?


「聞いてる?これ先生から預かってるプリントなんだけど」

「……あ、ああ、おう。サ、サンキュ」

莉緒の真似をしてニコリと笑ってみたけど、自分でも不自然だって分かる。

なんとなく眼鏡の下から冷ややかな視線を感じたけど、きっと気のせいだと思うことにした。


なんでこうも人付き合いが苦手なんだろ。

人見知りではあるけどもう高校生活も2か月目に突入した。人見知りなんて言ってる場合じゃない。


「池内」

するとまた横から声をかけられて、慌てて振り向くとそこには杉野がいた。

まだ色々と謝る準備ができていない。これからシミュレーションしようと思ったのに。


「す、杉野……ひ、久しぶり!」

謝るはずが空気に耐えられなくて、つい明るい言葉が出てしまった。
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