玲汰、知ってる?
「池内、危ない……!」
「え?」
杉野に名前を呼ばれた気がして振り返ると、俺の顔面に勢いよくバスケットボールが当たった。
今は体育の授業。
サウナ状態の体育館で青チームと赤チームに分かれてバスケの試合中だった。
「痛っ……」
誰が投げたかは分からないけど、顔が埋まるかと思うほどの衝撃。まあ、コートの中でぼーっと突っ立っていた俺が悪いんだけど。
「い、池内、大丈夫か?」
「池内くん平気?」
杉野とその他の女子が心配して駆け寄ってきてくれた。
「あー平気平気」
そう言いながら立ち上がると一瞬、頭がくらっとした。
暑さのせいか。
それともあいつのことが気掛かりで寝不足のせいか。
「……池内、鼻血でてる」
「え……」
確認すると手のひらに赤いものが付いていた。
道理で鼻の近くがズキズキと痛いわけだ。
仕方なく俺はバスケのチームから外れて、そのまま保健室へと向かった。