玲汰、知ってる?
次の授業は教室移動だった。
チャイムが鳴る前に廊下に出て移動を始めると前から女子の集団が歩いてきた。
その中には莉緒もいて、どうやら3組の女子たちらしい。
チラッと莉緒を見ると目が合って、だけどすぐに隣の友達と話はじめた。
そのまますれ違って杉野には『やっぱり喧嘩したんだろ』と言われたけど、俺はなにも言い返さなかった。
いつもなら校内で会うと必ず莉緒はちょっかいを出してくる。
後ろからわざと叩いてきたり、遠くにいた時は口パクで悪口を言ってきたり。
たまに馬鹿力でヘッドロックをかけられた時は本気で生死をさ迷うほど。
そのぐらいあいつはどんな時でも俺に関わってきた。
確かに俺から一緒に帰んなくてもいいんじゃないかと提案した。それで『じゃあ、登下校も別々にしよう』とあいつが乗った。
だけど校内でも話さないなんて極端すぎるっていうか……。
あいつは頭がいいのにそういうところが多々あるんだ。
小学校の家庭科の授業でフェルトのマスコットを作った時も、不得意なことはあまりないはずなのに莉緒の作ったヒヨコがすげー不細工で。
悔しかったのかなんなのか、あいつはそれから他の授業そっちのけでヒヨコばっかり作ってた。
結局、お手本どおりに完成するまであいつは36匹のヒヨコを作った。
あいつはいつだって0か100しか考え方がない。