玲汰、知ってる?
……はあ。本当になんなんだよ。
あいつに会うと俺はこの言葉を何度も繰り返す。
莉緒はガキの頃から強気で傲慢で、その上怖いもの知らず。俺があいつに逆らえないのは少なからず幼少時代の恩があるから。
ここだけの話、俺はいわゆるいじめられっこでそれは保育園からすでに始まっていた。
内気な性格でオモチャを取られても言い返すことができなくていつもヘラヘラしてた。
だから周りの奴らから、からかわれることは日常茶飯事で、いつもその度に泣いていた。そういう時は必ずどこかから声が聞こえた。
『玲汰をいじめたヤツは誰だっ!』
莉緒は特撮ヒーローみたいに飛んできて、俺を泣かせた奴らを片っぱしから蹴散らしていく。
ボスと言われていた体がでかいヤツでも、怖い兄貴がいるって評判のヤツでもお構い無しに莉緒は立ち向かっていく。
髪の毛を引っ張られても、お気に入りの洋服が汚れても関係ないって顔で俺ができないことをしてくれていた。
『おい、大丈夫か?』
泣いているだけの俺にボロボロの姿をした莉緒が決まって手を差し出してくれる。
本当にあいつはヒーローみたいな顔をして、俺のことを守ってくれたんだ。