玲汰、知ってる?
「高校はな義務教育じゃねーんだよ。テストでダメだったら赤点。赤点取ったら留年。分かってんの?」
「……分かってます」
「だったら嫌でもやる気だせ」
「やる気はあるよ」
丸暗記だけでは乗りきれないことは分かっている。つーかこの量の勉強を丸暗記なんかしたら脳がパンクして火が出そう。
莉緒は「はあ……」とため息をついて、俺を見た。
「勉強嫌い?」
「分かってることを聞くなよ」
「じゃあ、好きになれ」
「は?」
「勉強は分からないからつまんないんだよ。理解したら興味が出るし、結果的に玲汰の頭でも平均点ぐらい取れるってこと」
「……お前、自分の勉強はいいのかよ」
「誰に聞いてんだよ」
そのあと学年一位確実の莉緒に勉強を叩き込まれた。
教え方は雑というか怖さしかないけど、授業で先生が言っている言葉よりは分かりやすかった。
莉緒の見やすいノートを借りて古典と現代文はなんとなく乗りきれそう。
今日の分の勉強がとりあえず一区切りつくと、
俺は力が抜けたように大の字に寝転んだ。
「……高校の勉強って面倒くせーな」
ぽろりと本音。
「今からそんなこと言っててどうすんだよ。テストはこれから先もあるんだぞ」
「分かってるよ」
「……はあ」
莉緒は眉間にシワを寄せながら古典と現代文の教科書をリュックへと閉まった。