玲汰、知ってる?
そして夜は更けていって、そろそろ寝る時間。
コンコンと部屋のドアがノックされて母ちゃんが顔を出した。
「ちょっと手伝って」
何故か母ちゃんの手には客人用の布団。
「なに?」
「玲汰の部屋に敷くから」
「だからなんで?」
「莉緒ちゃんが寝るからに決まってるでしょ!」
意味も分からず母ちゃんに怒られた。
母ちゃんは「もうどいて!」と苛ついた様子で部屋の中に入ってきて、俺のベッドの下に布団を敷きはじめた。
「え、待って。あいつここで寝んの?」
それこそマジで聞いてない。というかなんでそういう展開になったのかが理解不能。
「早くしないと莉緒ちゃんお風呂から出てきちゃうでしょ。そこにある雑誌を片してシーツ敷くの手伝ってちょうだい」
「いやいやムリ。母ちゃんの部屋で寝ればいいじゃん」
「私は仕事で朝が早いのよ。莉緒ちゃん休みなのにバタバタして起こしたら可哀想でしょ」
「じゃあ、リビング……」
「リビングなんかで寝て強盗にでも襲われたらどうするのよ!窓ガラス割られて中に入られたら莉緒ちゃん美人だからすぐに拐われちゃう!」
「………」
うちのセキュリティそんなにユルいのかよ。
っていうかどんだけ物騒な想像力だよ。
結局、反論する隙も与えてもらえずに莉緒の布団が綺麗に敷かれてしまった。