玲汰、知ってる?
それから洗面台で髪の毛を乾かした莉緒が戻ってきた。
ボーダーのラクそうなワンピースの部屋着を着ていて、髪の毛をひとつにまとめている。
なんとなく気まずくて、俺はわざとベッドに寝転んで漫画をペラペラとめくっていた。
「おばさんが玲汰の部屋で寝ろって」
「嫌なら庭で寝れば。お前なら襲われても余裕で倒せるよ」
「………」
「ひぃぃっ!」
気づくと莉緒が冷えたペットボトルを俺の首に押し当てていて、思わずヘンな奇声が部屋に響いた。
「ぷっ、あはは!なんだよその声」
莉緒が腹を抱えて笑っている。
そんなあいつからはなんだか爽やかないい匂いがして、中身は男なのに女子力高いことするなよって感じだ。
莉緒はそのまま布団にうつ伏せになって、ワンピースから見える足をバタバタと上下に動かしていた。
そして隣の本棚へと手を伸ばすと、水色のアルバムを迷わずに取った。
「これ何度見ても飽きないんだよね」
それは保育園から小学校低学年までの写真。
莉緒は俺の部屋にあるものを全てと言っていいほど把握してるから、自分の所有物のように遠慮なく使ったり触ったりする。