玲汰、知ってる?
「あ、これこれ!」
莉緒はこのアルバムを見ると決まって同じ写真を指さす。
「保育園の豆まきの時のやつ。この玲汰の顔が傑作で何回見ても笑える」
考えてみれば俺たちの関係はこの写真が撮られた豆まきの時に始まったといっても大袈裟じゃない。
保育園に入園した時はそれなりに友達がいて、わりと毎日楽しく過ごしてた記憶がある。だけどだんだんと誰が弱くて誰が強いのか周りが理解し始めて。
豆まきをするというイベントの時に事件は起きた。
みんなの手には折り紙で作った豆入れの箱。均等に豆が配られて鬼役は先生がやる予定だった。
それなのに『鬼はー外っ』とあのフレーズが聞こえてきた瞬間に豆は先生ではなく俺に向かって飛んできた。
理由は今でも分からない。恐らく可愛くて人気がある先生に豆を投げるなら俺に投げたほうがいいと思ったのかもしれない。
そこからはどこに逃げても豆が飛んでくる。もう園内から外に出ているのに止まらない。
もちろん俺は大泣き。
そこで助けてくれたのがもちろん莉緒だった。