玲汰、知ってる?
「あのさ、さっきも言ったんだけどなんでここでXが出てくんの?公式は丸暗記しろって言っただろ」
莉緒がだんだんとイライラしていた。
「丸暗記したよ。丸暗記した上で間違えたんだよ!」
「威張ってんじゃねーよ」
「はい、ごめんなさい」
月曜日なんて来なければいいのに。
っていうかテストごと消滅してくれないかな。
「……たく。じゃあもう1回最初から教えるから。こことここは絶対にテストに出るからまずこの問題を……」
根気よく俺に教えようとする莉緒の顔を何故かじっと見つめてしまった。目が合って「あ?」とチンピラのように睨まれたことは言うまでもない。
「お前のやる気スイッチ引き出すためにシャーペン眉間にぶっ刺してやろうか」
キラリと銀色のシャーペンを莉緒は掲げる。こいつならマジでやりそうで普通に怖いけど……。
「なんでそんなに必死なんだよ。勉強教えてくれって頼んだのは俺だけど、俺が赤点取ってもお前には関係……」
「あるよ」
ドキッとした。
珍しく莉緒が真剣な顔をして真っ直ぐに俺を見つめていたから。
本当にこいつはなにを考えているのか分からない。俺の理解力が乏(とぼ)しいわけじゃないと思う。
「……玲汰、私さ」
莉緒がなにかを言いかけた。だけどそれと同時にガチャリと部屋のドアが開く。