玲汰、知ってる?
そして今日の晩ごはんは何故かたこ焼きだった。
むかし買ったたこ焼き機を母ちゃんが台所から引っ張り出してきて「今日はパーティーよ!」なんて張り切っていた。
生地を作ってタコを入れて自動ボタンのスイッチを入れれば後は勝手に回っている。
「ねえ、チーズとか入れたらどう?」
「あ、キムチがあるわよ。あとは納豆も」
「なんか生地に混ざりそうだけどいいかも!」
俺がパクパクとたこ焼きを食べてる中、ふたりは盛り上がっていた。
キムチと納豆って……もはやタコ入ってないからたこ焼きじゃないじゃん。
なんでそういう別のものを入れたがるかな。こういうところも何故か母ちゃんと莉緒は気が合う。
「俺は食わないからな」
そう言って目の前のたこ焼きを口に入れた。
「ゲホゲホッ……!な、なにこれ……」
口内が焼けるように辛くて舌が痺れている。たまらずに麦茶を一気飲みしたけどまだピリピリと痛い。
「あーそれカラシ入り。位置的に玲汰が食べると思って」
「はあ?」
なにその悪意に満ちた言い方。
計画どおり食べてしまった自分が情けない。
いくら睨んでも俺が麦茶をおかわりしても莉緒は平然としていて楽しそうにキムチをトッピングしている。