玲汰、知ってる?

ムカついて追加の麦茶を取りに行ったついでにワサビを手に忍ばせた。

莉緒が母ちゃんと談笑してる間にワサビ入りのたこ焼きを密かに制作した。

そしてあいつの手がそれへと伸びる。


笑いそうになったけどそこは堪えて、莉緒がパクッとワサビたこ焼きを口に入れた。

入れた。……入れたはずなのにあいつは何事もなかったかのように食べている。


ああ、そういえば思い出した。

俺と同じで甘いものが大好きなくせに激辛5のマグマみたいなラーメン食べても莉緒は汗ひとつかかない。

それどころか世界一辛いと言われるデスソースを舐めてもなんともないヤツだった。

たぶん味覚がイカれてるんだと思う。


莉緒は俺の反応を見てクスリと笑って、そのあとも普通にたこ焼きを食べていた。


その日の夜は母ちゃんの部屋で莉緒は寝た。

明日は日曜日で母ちゃんの仕事は休みだし、女子トークするんだって張り切ってたけどそもそも母ちゃんはもう女子じゃねーよ。

部屋の電気を消して真っ暗な部屋。

とても静かで今日はゆっくり寝られそうだ。
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