玲汰、知ってる?
外は黄昏時で、辺りはオレンジ色に染まっていた。
うろこ雲になっている空には鳥が横並びの列を作って飛んでいて、鳥はテストがなくていいな……
なんて、バカなことを考えていた。
「今日は夜更かししないで早く寝ろよ」
「分かってるよ」
コンクリートに映るふたつの影。そういえばこうして肩を並べて歩くのは久しぶりかもしれない。
莉緒の背中には教科書が入った重たいリュック。
ちょっと考えて、小さな声で呟く。
「……持とうか?」
この週末は俺のために費やしてくれたし、改めてお礼を言うのは照れるからその代わり。
「らしくないこと言うなよ」
莉緒にあっさりと流された。
確かにこいつは俺よりも馬鹿力だし、華奢なくせに体力はあるからこんなリュックは余裕だって知ってたけど。
俺たちの関係はとても不思議だ。
勉強の為なら泊まり込みで、しかも同じ部屋で寝ることも大丈夫なのに並んで歩く互いの距離は近くない。
そして、少しだけ莉緒のほうが早歩き。
「玲汰、こっち」
真っ直ぐに行けば莉緒の家なのに、何故か右の道を指さした。
なにを考えてるのかほとんど分からないのに、
こいつがどこに行こうとしてるのかは分かる。
それは河川敷の歩道橋。