玲汰、知ってる?
「でも無駄だって分かってて真っ先に飛び込むのが玲汰なんだよな。無鉄砲っていうか後先考えないっていうか」
「けなしてるだろ」
「玲汰にはそういう行動力はあるってことだよ」
だとしても褒められてる気がしない。
「あの助けた猫はまだ生きてんのかな」
水面に浮かぶ夕日を見つめながら莉緒がぽつりと言った。
あのあと動物病院に連れていって、そこで里親を探してくれると言ってた。噂ではすぐに飼い主が見つかったらしいけど、どういう人かは分からない。
優しい人ならいいな、ってお互いに同じことを思っただけ。
「生きてるだろ。最長で16年生きた猫が世の中にはいるぐらいだから」
「……16か。私たちと同じ歳だな」
「どうした、感傷的になって」
「なってねーよ。バーカ」
莉緒がくしゃりと顔を潰しながら笑った。この笑顔の作り方はガキの頃のまま。
憎たらしいけど、憎めないようなそんな顔だ。