玲汰、知ってる?


練習を終えて帰り道。空には無数の星が輝いていて、丸い月が浮かんでいた。


――ガコンッ。

俺たちは公園内にある自販機で飲み物を買った。先に俺がコーラを買って、次に莉緒がお茶を買う。

同じタイミングでペットボトルのフタを開けて、ひと口飲んだ。


鈴虫だろうか。どこからそんな鳴き声が聞こえてくる。

俺はコーラを一気飲みして、少し離れたゴミ箱へと投げる。カコンッと的が外れて空しく空き缶がコロコロとコンクリートに転がった。


「下手くそ」

莉緒がそう言いながらお茶の缶を同じように投げた。

言うまでもなく綺麗な放物線を描いて吸い込まれるように缶はゴミ箱の中へ。

……ああ、本当になんで、こいつはこんなに完璧なんだろう。 


ムカついて転がった缶をゴミ箱に捨てながら、俺はそのまま自転車に股がった。


「ってかなんで前に乗ってんの?」

次に不機嫌な顔をしたのは莉緒のほう。俺の自転車に乗っている位置は後ろではなく前。


「たまには後ろに乗れば」

「なんで?」

「べつに……なんとなく?」

だって缶まで外して、そのまま大人しく自転車の後ろに乗せられてしまったらカッコ悪すぎだろ。

それに正直、後ろは足の置き場に困るしケツは痛いし、毎回けっこうムリして乗ってたりするし。
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