玲汰、知ってる?
「さっき荷台にカマキリがいたから嫌なんだろ」
ギクッと俺の目が泳いだ。
そう、前に乗ったのはカッコ悪いとかそんな理由じゃない。
練習が終わって自転車置き場に戻ったら荷台にカマキリがいた。しかも目が合ってシャーとご丁寧に威嚇ポーズまでされた。
莉緒は平気な顔をしてカマキリを草むらに戻してたけど、俺はそこにいたと思うだけで鳥肌が立つぐらい虫は苦手だ。
「ったく、仕方ないな」
莉緒はそう言って渋々、後ろへ乗った。
こいつを後ろに乗せてるなんて不思議だけど、
乗っているのか分からないほど重さは感じなかった。
夜の風が気持ちいい。
外灯に映る莉緒の影が大人しくて、いつもペラペラと喋るくせに今は木が揺れる音のほうが大きい。