玲汰、知ってる?
□「行ってやってもいいよ」
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それから数日が経って、雨が降ればいいと願ったけど残念ながら快晴だった。
校門に設置された〝体育祭〟の看板。校内の雰囲気もいつもと違って慌ただしくて、みんな自分の椅子をグラウンドへと運んだ。
「……いてっ!」
その途中で誰かに背中を押されて、危うく階段から転げ落ちそうになった。
「今日は敵同士だからな」
そう莉緒がニヤリと笑う。
莉緒は青色のハチマキを首に下げていて、うちのクラスのカラーは赤。
今日は髪の毛を右耳の後ろで縛っていて、歩くたびにそれがぴょんぴょんと揺れていた。
そのあとクラス別に並んで開会式が行われた。
選手宣誓や準備運動をしたあと、応援席である各自運んだ椅子へと戻る。
足元には貴重品が入ったカバンと熱中症対策の飲み物。
これでパラソルでもあれば完璧なのに、太陽はジリジリと頭上で燃えている。
こんな炎天下の中にいたら確実に倒れると日陰になっている木の下に逃げようとしたけれど、そこにはもう先約がいた。
……どうやらみんな考えることは同じらしい。
「第一種目の借り物競争を行います。各クラスの選手の皆さんは先生の指示に従って移動をはじめてください」
グラウンドにアナウンスが流れて、いよいよ最初の種目がはじまった。