玲汰、知ってる?


胸がざわめくのは振られた男子の気持ちに同調してしまったからなのか、それとも盗み聞きした罪悪感なのかは分からない。

だけど、見つからないようにそっと腰を低くして窓の下に座っていると、ふわりとシトラスの香りがした。


「バレバレなんだよ」

上を見上げると、窓枠に肘をついてため息をはく莉緒の姿。俺は動揺する気持ちを抑えてゆっくりと立ち上がった。


「お前って本当にモテるよな。これで何回目だよ?」

大丈夫だ。普段どおりの俺で喋れてる。


「さあ、数えてないけど。ってかなんで校舎の中にいんの?」

「ああ、杉野がトイレで……」

「ふーん」

莉緒は告白された直後とは思えないほど普通で、きっと慣れているんだろう。もし俺が告白なんてされたら相手が誰であろうと帰りは絶対にスキップすると思う。


「オッケーするのかと思った」

だって、見た目も中身も他の女子が羨ましがるくらい良い男っぽく見えたから。
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