玲汰、知ってる?
「そしたら玲汰への小言が減るからいいと思ったんだろ」
「……あーそういう考え方もあったんだな」
「なんだそれ」
そうだよ。こいつに彼氏ができれば俺は長年悩んでいた苦労から抜け出せるかもしれない。
俺に構う時間なんてなくなるだろうし、そんな考えもあったんだと言われて気づいて。
だけど、そんなことよりも聞いてしまいたいひとつのこと。
「……なあ、お前さ」
「ん?」
〝アレ〟はきっと、告白されることに慣れている中で、無難に相手をなるべく傷つけずに済む断り方をしただけなのかもしれない。
それでもなんとなく気になって。
「す、好きなヤツ……」と、言いかけるとタイミング悪く杉野がトイレから出てきて。
しかもグラウンドでは全員参加の綱引きのアナウンスが流れてしまい、話はそこで終わってしまった。