玲汰、知ってる?

風のようにスタートとして、1組は現在3番目。

運動が得意じゃない男子を寄せ集めたわりには、けっこう良い順位で次の人へとバトンが回った。

走るたびに舞う砂ぼこり。

カーブはみんな慎重になってスピードがゆるむ。さすがに陸上部の人は速くて3番目の人にバトンが回った時にはうちのクラスは一番最後になっていた。

帰ってきた2番滑走の人が「抜かされてごめん」と息をきらせて俺に言ったけど、「大丈夫」と人見知りも忘れて肩を叩いていた。

バトンがそろそろ杉野に回る。

俺はスタートラインに立って、大きく深呼吸した。


こんな緊張感は久しぶりだ。

求められることも期待されることもなかったから、緊張には弱いけどなんだかそれ以上にワクワクしてる。

たかが体育祭なのにみんな総立ちで応援してて、あまり話したことのないクラスメイトたちも一生懸命、声を張り上げていた。
< 99 / 161 >

この作品をシェア

pagetop