チョコミントが溶ける頃に
「だから、あの、私とで、デート……してほしいの……」



 うるうると濡れた瞳を上目遣いでぼくに向けた後、地面に視線を落とす。そして、長い制服の袖をきゅっと握った。


 うるうると濡れた瞳って……。やばい、もしかして泣きそう?



 帰りのHRが終わり、生徒たちが部活へ、家へ、あるいは他の場所へと動く時間帯。


 このぼくがいる昇降口にも、人がたくさんいるから泣かれても困る。



 はっとして周りを見ると、まるで告白をしているような場面に何だ何だと人が集まってきていた。


 なんで今まで気が付かなかったのだろう。



 ぼくは慌てて靴を履くと、彼女に言いながら白く細い腕を掴んだ。



「生嶋さん、一旦ここを離れよう」



 行った時にはもう、走り出していた。


「えー」「行っちゃうのかよー」などと後ろから野次馬たちの声が耳に入るが、無視。



 その声とは違うころころとした鈴の音のような、え、とあげられた小さな声が後ろから聞こえる。
 

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