チョコミントが溶ける頃に
「そうなんだ。ぼく、チョコミントのアイス食べたことないんだよね」
「ええっ!? そうなの!?」
「うん……」
生嶋さんがショックを受けたような顔をするのでゆっくり頷くと、彼女は飲み物を吹き出させるようなことを口にした。
「じゃあ、あげる! 美味しいから食べてみなよ!」
そう言うなり、アイスをぼくの方に向ける。
え、え、ええ……!?
ちょっと生嶋さん気付いてないの!? 自分がどんなことをしようとしているか、分かってる!?
「チョコミントの美味しさを、世尾くんにも知ってもらいたいな!」
……そんなことを笑顔で言われたら、断るに断れないじゃないか。
目の前には、ニコニコ笑顔でこちらにアイスを向ける生嶋さん。
周りには……きっとぼくらなんかを見ている人なんていないはず。
もし、ここで拒んだら、彼女は悲しむのかな。
そうなんだったらぼくは嫌だ……。
ぼくは拳を握りしめて覚悟を決めた。