チョコミントが溶ける頃に
 ぼくが一人うーんうーんと悩んでいると、生嶋さんが恥ずかしそうに、言いづらそうに呟いた。



「……あの、世尾くん……」



 見ると、さっきよりも赤い顔になってく。


 それが真っ赤な林檎のようで、不意に胸が高鳴った。



 ぼくはその感情を押し殺しながら、冷静を装って尋ねる。



「どうしたの?」



 すると、何があったのか、本当にこれ以上無いってくらい生嶋さんの顔が火照った。


 俯きがちになり、前髪が少し顔を隠す。



 え、どうしたんだろう。



「……手…………」



 て……て……手?


 一文字だと瞬時の理解が遅くなりがちだ。



 ていうか、手?


 手といえば、さっきから右手に温かくて柔らかいものが――――――。




 ふっと自分の右手を見ると、ぎゅっと握られた誰かと繋がれた手。



 その手の主は、もちろん生嶋さんだ。

 

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