チョコミントが溶ける頃に
女性は細い手で口を覆い、深く頭を下げると水色の糸のような髪がさらりと
揺れた。
「幾羽の母です……。娘がご迷惑おかけしてしまってすいません」
幾羽――――――生嶋幾羽。
この人は生嶋さんの母親だったのか。
そう言われてみれば、整った顔や髪の色など、生嶋さんと似た部分がある。
「いえ……大丈夫です。迷惑なんて思っていませんから」
生嶋さんのお母さんに謝られるのはおかしい。ぼくのほうが謝らなくちゃいけないのに。
ぼくはふらつきながらも立ち上がると、頭をぶんと勢いよく前に振って、彼女よりも深く、長く腰を折る。
「ぼくこそ、本当にすいません……っ。
ぼくがもっとしっかりしていればもっと早く生嶋さんを病院に連れて行くことができたのに……。
ぼくのせいです……生嶋さんが危ない状態になってしまっていたら」
「そんな思い詰めることはないよ、優成くん」
突然響く男性の低い声に、思わず下げていた頭を上に上げた。
あとからゆっくり来たのか、生嶋さんのお母さんの震える肩に手を置いて背の高い男性が傍らに立っている。
「いつこういう日が来てもおかしくはなかったんだ」
そう悲しげな眼差しで床に視線を落とす、生嶋さんのお父さん。