チョコミントが溶ける頃に
「幾羽さんの病室は四〇一号室です。
まだ麻酔の効果で眠っているかもしれませんが、かなり辛い状態ですのであまり興奮させないようにしてあげて下さい」
それぞれの様子を見つめ、淡々と言葉を紡ぐと再び部屋の中に戻っていった。
生嶋さんの両親はありがとうございます、とお辞儀をして、ゆっくりと歩みを進め始める。
すぐに生嶋さんのお母さんが振り向いて、ぼくに弱々しく微笑みかけた。
「世尾くんも、良かったら来てあげてね」
その顔が、生嶋さんと重なって見えて。しばらく足がすくんで動けなかった。
魔法が溶けたように動けるようになって、生嶋さんが睡る四〇一号室に着いたのは何分か先のことだった。
『四〇一』と書かれたプレートのある部屋の扉をノックすると、中からソプラノの「どうぞ」という声がドア越しで耳に入る。
極力音を立てないよう静かにドアの開閉をした。
部屋に入ったぼくの瞳に写るのは、ベッドですやすやと目を閉じて眠る生嶋さんの姿。
それだけで、目がうるっとしてきてしまう。
ダメ。
泣いちゃ、いけないんだ。
一番辛いのは、生嶋さんだから。
生嶋さんのお父さんが用意してくれた椅子に体を預ける。