チョコミントが溶ける頃に
* * *
好きになった子は、余命があと数日しかなかった。
――――――なんて、どこぞの映画や漫画みたいな話。
なぜ、ぼくと生嶋さんがその物語の役者に選ばれてしまったのだろうか。
ぼくたちにしなくちゃいけない理由は、なに?
せっかく、お互いのことを知り始めたのに。
せっかく、“これから”のことを考えて幸せそうな顔をしていたのに。
どうしてこんなにも脆(モロ)く、簡単に、“幸せ”って崩れていってしまうのだろう。
ぼくと生嶋さんは付き合っていない。
生嶋さんがぼくのことをどう思っているのかも分からない。
所詮、ぼくの片思いだ。
けど、確かに幸せだった。
どうして。どうして。どうして?
誰にぶつければ良いか分からぬ思いが胸の中をいっぱいにする。
通り抜けることのできない言葉が、想いが、喉につっかえて。
ぼくは一晩中今日一日のことを頭に思い返しながら、しょっぱい雫で枕を濡らし続けた。