チョコミントが溶ける頃に
 ぼくは慌ててしっかりと握られていた手を解くと、彼女に謝った。


 もしかしたら迷惑していたかもしれないし、嫌だったかも、しれない。




 こればかりは冷静なんて言ってられない。


 恥ずかしすぎて普通には謝れず、腕で顔を隠して言った。



「ごっ……ごめん、生嶋さん」


「ううん、大丈夫……」



 大丈夫とか言う割には、最後の方が小さい声になってしぼんでいた。



 ちょっとしたことで真っ赤な林檎みたいになって、可愛いな……ってダメダメダメ! 意識しちゃダメだ。




 ぼくは一度大きく息を吸い、生嶋さんに提案した。



「ここから少し先に休める所があるから、そこで少し話する?」



 よし、冷静に言えた。


 言葉を言うごとに緊張してしまいそうになる。



 けれど、生嶋さんは首を振った。



「ここで十分だよ。ここでちょっと、話そっか」



 ぼくもうん、と頷くと少し微妙な間を空けて、生嶋さんの隣に立った。



 漏らした息が白く見える。


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