チョコミントが溶ける頃に
「なんだろ……。特に意味はないんだけど、言うとしたら……デートに誘ってくれてありがとう、っていうお礼かな」
その言葉を聞いた生嶋さんは驚いて胸の前で何度も手を振る。
「いやいやっ、そんなお礼貰うほどのことじゃないよ! むしろこっちがお礼したいくらい……」
そんなことないのは、こっちの方こそだよ。
生嶋さんはぼくに幸せな時間をくれて、ぼくに幸せ、と今呼べるのか分からない感情を教えてくれた。
ぼくがあげるお礼の品なんて、天秤にかけたら絶対に上がってしまう。
それくらい、価値のあるものだったんたよ。
彼女の声を聞きながら、ぼくは静かに首を振った。
「生嶋さんがぼくを誘ってくれてなかったら、生嶋さんのことを詳しく知ることはできなかったし、なにより生嶋さんと一緒にいることもなかったんだ。
あと、なんて言うかなー……様子見てるとさ、生嶋さん誰にも倒れたこと言ってないでしょ」
「!!」
彼女はいかにも図星だという、わかりやすい反応をする。
絶対、言った方がいいのに。なにも言わないで旅立たれちゃうと、それはそれで結局悲しむんだよ。