チョコミントが溶ける頃に
「……言えない」
分かりきっていた答え。
言われなくて安堵すると同時に、拒絶されて一瞬目の前が真っ暗になるような感覚に陥った。
「けど、すぐに世尾くんは知ることになるよ」
そう言って、また淋しそうに微笑む生嶋さん。
たちまち孤独を感じさせるような微笑が歪み、咳を連続させた。
彼女が咳をする度あの日の、彼女が血を吐いて倒れた光景がフラッシュバックして恐怖感に襲われる。
見ているだけのぼくでも辛いのに、生嶋さんはぼくの倍以上辛いに違いない。
一回収まったと思ったらまだ止まらない咳。
彼女の目に涙が滲む。
「生嶋さん、大丈夫!?」
丸くなった背中を身を乗り出して手で擦(サス)る。早く収まって、と願いを込めて。
あまりの酷さにぼくの心に不安が募っていく。
「……ナースコール、押そっか?」
不安に押し潰されそうで、怖くて助けを呼ぼうとするぼくの声にも首を振られてしまう。
彼女の背中を擦りながら、ぼくは悲痛な声で叫んだ。
「どうして……!? なんで呼ばないの、生嶋さん……!」
苦しそうな笑顔を顔に浮かべて、咳混じりに掠れた声で、生嶋さんは言葉を紡ぐ。
それは、まるで最後の言葉のように。