チョコミントが溶ける頃に





「せお……くんと、一緒にいら、れて……幸せっ、だったよ……」




「そんなこと言わないで! いつでも幸せにしてあげるから!! お願いだよ……」





 目の前の彼女はあと少しで消えて無くなってしまいそうで、ぼくも視界全体が白くもやっとして。歪んで見える。視界が縦に何度も動く。




 格好良くなんてぼくには無理だった。



 こんな弱い自分を見せたくなかったけれど、生嶋さんにとってこんな自分も、新しく知れた一面と思ってくれてたらいいな。





 そんな時、もうこれ以上喋って欲しくないというのに、最後の願いと必死に震える口を開く。




「せお、くん……名前、呼んで。おね……がい……」





 少し躊躇(タメラ)ったけど、そんなことで彼女が喜ぶのならなんでもなかった。




 生嶋さんの咳の音だけが響く病室内に、ぼくの震える声が通る。





「……幾羽」





 彼女は“ありがとう”とでも言うように、幸せそうに微笑んだ。




 生嶋さんだからこそてきる、この笑顔は。



 なによりも、美しかった。






 涙で揺れる視界を壊そうと、腕で拭おうとした手を微かな力で包まれる。



 その手は温かな熱を孕(ハラ)んでいて、ぼくの恐怖に震える心を安心させた。



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