チョコミントが溶ける頃に





 好きなやつ、いたんだろ。



 なのに、なんでぼくを誘ったんだよ。




 最期の口付けも。




 ぼくを想っていないくせに、なんでそんなことをしたの……?



 感謝のつもりなのだろうか。


 もしそうなんだったら、そんなのいらなかった。




 今でも、微かに触れた唇の感触が残っていて、記憶も鮮明に思い出せる。



 それが、余計辛かった。





 綺麗事ばかり言って今のぼくはそんな事を思っていない。





 生嶋さんがぼくを誘ってくれてなかったら、生嶋さんのことを詳しく知ることはできなかったし、なにより生嶋さんと一緒にいることもなかった?


 今、誘ってくれなければ、出逢わなければと思っている。




 もし誘われてなかったら結果だけしか聞かされないなんて、嫌だ?


 今では本当にそう思っているのかさえ分からない。





 この苦しみから解放されたいがために生嶋さんの記憶を全部、失ってしまいたい――――そう、思ってしまった。




 本当に最低な男だな、とつくづく思う。






 と、聞き慣れたスマホの着メロが鳴って思考を中断させた。




 こんな時に、誰なんだ。



 メールを見る気力さえ、ない。


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