チョコミントが溶ける頃に
 読み終わっても、何度も何度も生嶋さんからのメッセージを読み直した。




 ぼくだって、生嶋さんとデートできて楽しくて幸せだった。


 浮かれてしまうほど、幸せだったんだよ。この気持ちに嘘はない。




 ぼくは生嶋さんの人生を彩れていたんだ。


 生嶋さんみたいな人に思われてぼくは幸せ者だったんだね。


 光栄と言ってもいいほど、ぼくには勿体無い人だった。




 もう枯れてしまったと思っていた涙がまたぼろぼろ流れ落 カーテンがふと揺れて、閉ざされた部屋に外の光が入ってくる。






 生嶋さんといられて楽しかった。幸せだった。




 けど、それも全て過去の話だ。




 生嶋さんの我儘は、我儘っていうほどの我儘じゃない。ささやかすぎる。



 確かに生嶋さんの起こした行動で、これからも後悔したり憎んだり悲しんだりすると思う。



 
 これからも生嶋さんから抜け出せなくて、ずっと泣いたり暗かったりするかもしれない。




 だけど、生嶋さんの為にぼくはなるべく泣かないようにする。



 笑顔でいるよ。



 デコピンたくさんされちゃいそうだし……。





 すぐにはいい恋ができないだろうけど、生嶋さんよりも綺麗な女の人と幸せになってやるから。




 でも心の中にずっと生嶋さんはい続けるだろう。


 こんな別れ方、生涯忘れるはずがない。




 挫(クジ)けそうになる時もあるけど、生嶋さん、ぼくを見ていてね。



 もうこれで泣くのはやめにするから。





 ぼくは濡れた目をごしっと袖で擦り、ベッドから立ち上がると高級感のあるカーテンを勢い良く開いた。


 
 そこから見える雲ひとつない青空の下で、茶色い幹の葉のない木が寂しげに枝を揺らす。


 
 それは、まるでぼくと生嶋さんを比喩しているよう。




 この木々は季節が移り変わるごとによってこの寂しげな雰囲気もガラリと変わる。


 木とぼく、どっちが早く変われるかな?




 生嶋さんが見守ってくれているような気がして、思わずふっと頬を緩めた。



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