狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅹ―ⅰ 第一位の王が統治する国
「え…」
はっとアレスが顔を上げると、さっきまで遠くに見えていた精霊の国の門がすぐ目の前にあることに気が付く。
「あれ…ど…して…」
心臓の音が大きくなり、目に見えない何かが作用していることは明らかだった。
すると…中からそんな彼の様子を見て笑う少女の声が聞こえた。
『ふふっ…どうぞ中にお入りくださいな?』
小さな旋風(つむじかぜ)が目の前をゆらりと移動し、アレスを誘っているようだ。
しかしその中に人の姿は見えず…一歩近寄ったアレスはガシッと肩を掴まれてしまった。
「アレス、彼女は風の精霊だ。この国に足を踏み入れたら二度と戻れないと思え」
唸るように声を発し、肩を掴んでいたのはブラストだった。
「そ、そんな…」
冷や汗がどっと流れ、加護の灯を握る手は小刻みに震えている。