狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅹ―ⅵ 五大国・最強の王
「現精霊王が…千年王だからだ」
ブラストの声が直接脳に響き渡るようにアレスの思考を激しく揺らす。
「せ、千年王って…ただの伝説ではないの、ですか…?」
「まぁ、それくらいの頻度でしか現れないと聞いている」
二人の会話を聞きながらもカイはよく理解できておらず、テトラたちの袖をひいて説明を求めた。
「千年王って?」
「そうだね…」
ややためらいを見せたテトラに代わり、もう一人の青年が前にでた。
「王の寿命は長い。その力に比例して生命も長くなると言われているのは知ってるな?」
「そのくらいは…」
在位五百年を超えたキュリオが第二位ということは実力も二番目ということであろうことはカイにもわかっていた。しかし"歴代最高"である彼を上回る者がいるということがあまり実感がない。一瞬にして大地を駆け巡り、悠久全土にその力を行きわたらせることが出来る程の力の持ち主の上をいくというのはどういうことなのだろうか。
「いまの精霊王は齢千年をこえている。その彼の力がどれほどのものかなど誰も知らない…その真の強さを知ることが出来るとしたら…」
「したら…?」
カイはあまりの緊張に咽喉がからからに乾いていた。想像を絶するような天上での話に気が遠くなりそうな違和感を覚える。
「それは戦いの時だ」