狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅹ―ⅷ 五大国・最強の王
―――王と呼ばれた青年は巨大な樹木へと背を預けながら光の精霊を見つめている。そしてその美しい瞳は翡翠の色を宿していた。が、しかし…彼の表情からは何も伝わって来ず、心を読み取ることは出来そうにない。
光の精霊が彼のもとへ移動すると、彼女に包まれた書簡に気付いた精霊王はわずかに眉を動かした。
『…悠久の王からのものか…』
『はい。先程使者が持って参りました』
片膝を折り曲げ、左腕をのせた精霊王。
受け取った手紙の封印を見ると紛れもなく悠久の王のものであることが確認できる。そして表には精霊王の彼の名が書かれていた。
流れるような動作で封を開けると、見覚えのある悠久の王の美しい字が連なっている。
最後まで目を通した精霊王は考える素振りも見せず手紙を懐にしまった。彼の興味はもうなくなってしまったのか、そのまま静かに目を閉じている。
『……』
悠久の王からの書簡ならば返事をしないという選択肢は彼にはないはずだ。そう思った光の精霊は樹木から降り、木の下で王の返事を待つ事にした――――