狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅺ―ⅲ 戯れの代償
「ハァ、ハァ・・・クソッ!!」
恨めしそうな息切れのする声を聞き、ゆっくりと目をあけたアレスが見たのは…美しかった外見はひどく焼けただれ、艶やかな髪も熱にやられたように見るも無残に溶けてしまっている醜い女の姿だった。
すると、激怒するかと思われたもうひとりの男のヴァンパイアは嘲笑うかのように冷たい視線を彼女に向ける。
「悠久の使者に手を出せばどうなるか…わかりきってたことだろう?自業自得だな」
「う、うるさいっ!!」
ギロリと睨む女の瞳にも動じず、男は弧を描くように片手を胸元に添えると、紳士のような振る舞いで優雅に頭をさげた。
「お戯れが過ぎました…大変申し訳ありません悠久の使者殿。我が王へのご用件ならば私めが仰せつかります」
「は、はい…」
まだドキドキと高鳴る胸を落ち着けるためにアレスは深呼吸した。そして背後からブラストがキュリオの書簡を彼に差し出す。今度はブラストが腕を掴まれるのではないかとそのやりとりに警戒したアレスだったが、男はすんなり手紙を受け取ると一礼して「確かにお受け取りいたしました」と大人しく下がっていった。