狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅺ―ⅳ 戯れの代償
そして男がいなくなると、取り残された女は重く体を引きずるようにして視界から消えていく。そんな背景に見えるのは、空に浮かぶ巨大な月と漆黒の闇。
「急がないと…」
そして門が閉ざされるとアレスはカイを振り返って言った。
「カイ、助けてくれてありがとう。君が私の腕を掴んでくれたおかげで倒れ込まずにすんだよ」
ニコリと笑みを向けるアレスに恥ずかしくなったカイは照れ隠しのように笑うと、今度はいきなり激怒してブラストへと詰め寄った。
「おっさん何でアレスを助けなかったんだよ!!」
それはテトラたちにも言えることで、引き込まれたアレスを助けようとした者はカイ以外に誰もいなかったのだ。
すると、ニカッと笑ったブラストがバンバンとカイの背中を叩いた。
「はっはっは!少し加護の灯がどんなものか見せてやるのもいいかと思ってなっ!!出発前に言われなかったか?加護の灯があれば絶対安全だって!」
得意げに笑うブラストはグリグリとカイとアレスの頭を撫でくりまわしている。
「加護の灯がなければ見習いの君たちを使者に選ぶなんてキュリオ様がなさるわけないさ」
同じく微笑むテトラたち。