狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅺ―ⅷ 第五位の王
「この国で最近誕生した命はあったか?」
「いえ…ここ数年は」
「該当者なしだな」
「該当者なし、ですか」
「ああ、悠久で出生不明の赤ん坊が発見されたらしい。返事は俺が出す。お前は持ち場に戻れ」
「…かしこまりました」
使者が運んできた内容がどれほどのものか心配していたが、門番の彼の取り越し苦労だったようだ。すると、
「…面白そうだな」
ボソリと呟かれた王の言葉は小さく、門番の彼には聞こえなかった。そうしているうちに紅の瞳の青年の背中には大きい漆黒の翼が堂々たるその姿をあらし、彼は大空へと羽ばたいてしまった。王である彼の翼は一族のそれとは違い、キュリオや他の王と同じく鳥のような翼だ。