狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅺ―ⅸ 妖しい漆黒の翼は悠久を目指す
夜空を舞う王の姿をぼんやりと眺めていた男は、はっとしてまた大声で叫ぶ。
「どちらに行かれるかちゃんとおっしゃってから出かけてくださいよぉぉおおっ!!」
城の中の大部分の者がその声を聞き、クスクスと笑っている。
気まぐれで、どこか少年っぽさを残した王と家臣らのこのやりとりは毎日のように繰り広げられていたため、これが日常茶飯事なのだ。
ヴァンパイアの王が向かった先はどこかわからない。
…冷たい風を肌に受けながら、彼は自国の門をくぐり異空間へと飛び立っていた。そして紅の瞳が真っ直ぐ見据えた先には…銀色に輝く巨大な水晶でつくられた門がそびえ立っている。
(悠久の国か…久しぶりだな)
不敵な笑みを浮かべたヴァンパイアの王はキュリオの治める地へと侵入しはじめていた――――