狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅺ―ⅹ 迫りくる影
――――悠久の城の中庭、微笑みあう美しい銀髪の王と幼子の楽しそうな声が響いている。赤子の小さな体を片腕で抱きしめ、満開の花々の間をゆっくり歩き、時折しゃがんで花を指差しながら赤ん坊へと何か話しかけている。
まだ言葉がわからないはずの幼子も、キュリオの笑みにつられるように先程から笑い声をあげていた。
「この花はお前によく似ているね。小さくて本当に愛らしい…」
あわいピンク色の花をひとつ手に取ると、キュリオは柔らかな彼女の髪にそれをさしてやる。
「うん、とても素敵だよ。そうだ…この花に似せた髪飾りをつくってもらおうか?それともドレスがいいかな?」
まだ他国からの返事が返ってきていないにも関わらず、キュリオが彼女を手放す気がないのは誰からみても一目瞭然だった。会話の内容からしても自分の子のように可愛がっている。