狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅻ 異空間の旅Ⅲ
吸血鬼の国の門から遠ざかった一行の背後をヴァンパイアの王が通り過ぎたことを彼らは知らなかった。もし出くわしてひと悶着あったとしても、使者の彼らではヴァンパイアの王には歯が立たないだろう。
「なぁ、さっきの吸血鬼の国の王様の神具ってやつは何なんだ?」
カイが呑気にブラストを見上げると、ブラストは感心するように大きく頷いた。
「いい事だなカイ!お前もやっと学ぶ気になったかっ!!剣士だからといって体だけを鍛えていれば良いというわけではないんだぞ!!」
先頭のアレスは背後から聞こえてくる彼らの声に小さく笑っていたが、先程みた夜の風景に内心焦りを抱いていた。日が暮れる前に悠久に戻る予定だったため、大幅に遅れたと思っているのだ。
「彼の神具は爪だっ!!いっとくがな、ただの爪じゃないぞ?」
「毒でも仕込んであるとかか?」
カイにしてはいいところを突いたな、とブラストは思ったが…
「なんだその暗殺者(アサシン)のような細工は!違うぞ!!」
するとテトラが歩調を緩めてカイの隣に並んだ。
「もう少し厄介なものさ。そしてヴァンパイアらしいものだよ」
与えられたヒントの中でカイは腕組みをしながら、うーん…と唸った。