狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

Ⅻ―ⅵ 現れた冥王


突如聞こえた中性的な声に一同は震えあがる。


(な、なんだこの感じ…体が…)


アレスはカイたちを見つめたままその場から動けない。体が石のように重く、自分の意志と反して体は行動を止めている。そして背に感じる鋭い視線に身の毛がよだち、恐怖のあまり視線が定まらない。

そして…ブラストやテトラたちも眉間に皺をよせ、額に嫌な汗をかいている。


「まずいぞ…この感じは冥王か」


使者の経験がある彼らは前にも何かあったのだろうか。だが、冥王の気配を知らぬアレスでさえわかる。この圧倒的な威圧感と今にも押しつぶされそうな殺気…とても人に出せるようなものではなかったからだ。

「アレス、そのまま加護の灯をよこせ。俺がいく」

「…っ」

アレスは言葉を紡げず、首を小さく縦に振るのが精いっぱいだった。そして強張るアレスの手から灯を受け取ったブラストは深呼吸しながら声のしたほうへと歩み寄っていく。

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