狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅣ―ⅰ 君の虜Ⅰ
「アオイ、まもなく他の国の王からの返事が届く。その返事がどうであれ私はお前を手放すつもりはない。もし君に本当の家族がいても…私の傍にいてくれるかい?」
「…ぅっ」
言葉にならない声をあげ、小さな赤ん坊は血の繋がりのない悠久の王の首元に手をまわし顔を埋めた。
「こんな事お前に聞いて…ずるいね私は」
(…是非もわからない赤ん坊に選択を迫るわけにはいかない。彼女の両親が出てきたら面と向かってこの子を引き取りたいと申し出よう)
柔らかな彼女の髪に頬を寄せ、小さな背中を優しくなでるキュリオ。そして、ふとフードにある飾りに手が触れ…首を傾げながら彼女の背後をのぞきみた。
「…これは…ラビット?」
指先でふわふわな長いピンクの耳を飾りを持ち上げてみる。すると、背の上で手を動かしている彼の動作が気になったのかアオイが顔をあげた。
「…?」
キュリオのやっていることが視界に入っていない彼女は、目を丸くして彼の空色の瞳を見つめている。
(女官たちの仕業か…しかし、悪くない)
「気に入らなかったら言っておくれ」
白く透き通るような彼女の肌に、ピンク色の頬と唇。そしてこのベビー服はとても彼女の雰囲気に合っていて、その飾りさえも彼女の一部に見えてしまうほどに可愛らしかった。
手に収まってしまうほどのフードを広げ、彼女の頭にそっとかぶせる。ぐずってしまわないかその表情に細心の注意を払いながら。が、アオイは少しも嫌がらず目を真ん丸にしてこちらを見上げている。
「ああ…なんて愛らしい。天使のようだ…」