狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅣ―ⅱ 君の虜Ⅱ
きっと女官たちがこの場にいたら同じ言葉を発しただろう。普段そのようなことを言わないキュリオさえ、思わず口ずさんでしまうほどだ。
柔らかい微笑みを向ける彼の顔を見て、幼い彼女はつられるように笑う。
「きゃぁっ」
はしゃぐような明るい声を上げ、頬を染め目を細めるアオイ。そしてその声と表情はさらにキュリオの心を魅了していった。
「ふふ、こんなに可愛い顔を向けられたら私はお前の虜(とりこ)になってしまうよ」
再び頬を重ね合わせ、人のぬくもりに赤ん坊が喜んでいる頃…
「…アオイだと?書簡にあった赤ん坊とは別人か?」
遠い木の上からそう囁く彼の背には漆黒の翼があった――――