狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅣ―ⅳ 光の精霊
―――――律儀にも悠久の城の正面の門から姿を見せた光の精霊。悠久の王が中庭にいることはその気配からわかっていたが、彼女には礼儀というものがあり…さらには彼に最大の敬意をはらい、人の姿となる。
城門に立つ数人の家臣に歩み寄り、温度を感じさせぬ声で彼女は言葉を発した。
『…精霊王より悠久の王へ書簡を預かっております』
「はっ!ようこそおいでくださいました!!精霊王の使者殿!」
音もなく現れた彼女に家臣たちが目を向けると…
切れ長の瞳は知的でクールな印象で、真っ白な髪は上半身を流れ腰のあたりで巻き髪となっている。身に纏う服さえ肌との境界線が見えず、まるで光の塊のような女性だった――――
急ぎ足にキュリオのいる中庭に駆け込んできた家臣のひとりが、銀髪の王に向かって声を弾ませながら近づいてくる。
「…キュ、キュリオ様っ!!精霊の国より使者が参りましたっっ!」
バタバタと彼の足音とともに声を聞いたキュリオがはっと顔をあげある。
「早いな…今行く」
手身近にいる女官の一人に目配せすると、すぐに気が付いた彼女はキュリオの腕から赤ん坊を受け取り抱きかかえた。
「アオイを頼む」
「…かしこまりました」