狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅣ―ⅷ 重なる視線…Ⅰ
「……」
遠目でもわかる、幼い少女の清らかな瞳がこちらを捉え凝視していた。
「…あのガキ」
(俺に気が付いた…?)
どんどん高度を上げた彼と、幼いアオイの視線が交差したのはほんの数秒の出来事だった。二人のそれは現れたキュリオの背によって遮られ、彼女の姿は見えなくなってしまった。これはただの偶然か、それとも彼女が何かを感じ彼の姿を見つけたのかはわからない。
「…アオイ?」
女官の腕から抱き上げられ、キュリオの胸の中におさまった少女は心ここに非ずといったように銀髪の王と視線を合わせようとせず、背の高い彼の肩からさらに上方を見上げようと、キュリオの胸元にしがみついた。
「……?」
いよいよ異変に気が付いたキュリオが肩越しに振り返ると…
彼の驚異的な視力だからこそわかる黒い翼をもった人影をその視界にとらえた。とたんに氷のような鋭い眼差しでその姿を凝視するキュリオ。
「…何しに来た」
知らず知らずのうちに少女を抱きしめる腕に力がこもり、驚いたアオイが小さく声をあげた。
「…ぅ…?」
彼女は先程のように何かに夢中になっている様子はなく、大きな瞳をキュリオに向けて愛らしい表情を浮かべている。
「っ、痛かったかい?すまない…」
我に返ったキュリオはアオイの小さな体を優しくなでると、後方に控えていた家臣が言葉を発した。
「…いかがいたしましょうキュリオ様、このまま調査を続けなさいますか?」